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日本の食の課題、知っていますか?
数字でひも解く「農」と「漁」
後編|漁獲量減少は地球温暖化の影響!?

2025.6.29
日本の食の課題、知っていますか? <br>数字でひも解く「農」と「漁」<br><small>後編|漁獲量減少は地球温暖化の影響!?</small>

日本の「農」と「漁」の現状、直面する課題とその解決のために進められている取り組みについて知り、日本の食の未来を考えよう。後編では、農林水産省の河村さん監修のもと、日本の「漁」について紐解いていく。

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農林水産省 大臣官房政策課長
河村 仁(かわむら ひとし)
1995年、農林水産省入省。大臣室勤務などを経て埼玉県農林部部長、農林水産省経営局金融調整課長、水産庁漁政部企画課長、同部漁政課長を歴任。2024年7月から現職。

漁業大国・ニッポンの魚、
何種類食べていますか?

漁獲量減少の原因はさまざまあるが、1984年をピークに1995年にかけて急速に減少したのは排他的経済水域の設定による遠洋漁業の衰退、海洋・漁場環境の悪化などが考えられる

水産庁「令和5年度 水産白書」によると、日本の周辺水域には、世界約1万5000種の海水魚のうちの約3700種が生息しているという。

そのうち食用種は400~500種あり、漁獲量ではマイワシ、ホタテガイ、サバ類、カツオ及びスケトウダラの順に多く、よく消費される生鮮魚介類の種類ではサケ、マグロ、ブリが上位を占める。ただ、世界の漁業・養殖業の生産量、食用魚介類の消費量が増加する中、日本では漁獲量、消費量、購入量のいずれもが減少傾向にある。

地球温暖化で
魚の名産地もお引っ越し

気象庁によると、2024年までの日本近海の海域平均海面水温の上昇率(100年あたり+1.33℃)は、世界全体で平均した海面水温の上昇率(100年あたり+0.62℃)よりも大きい

漁獲量減少の原因のひとつとされるのが、地球温暖化による海水温の上昇。気象庁の「気候変動監視レポート」によると、日本近海における海域平均海面水温(年平均)は、2024年までの100年間で1.33℃も上昇している。

サケやスルメイカなどの主要魚種の不漁の原因となるほか、たとえば暖かい海を好むブリの漁獲量が北海道で激増するなど、魚の回遊経路や生息域にも影響を及ぼしている。

(上)クロマグロ
太平洋クロマグロは、かつて資源量が大きく減少したが、国際的な資源管理の取り組みにより、近年は回復傾向にある

(真ん中)サケ
写真はシロサケ。サケは日本で最も食べられている水産物だが、地球温暖化がサケの生息域などに影響を与え、不漁につながっている

(下)シイラ
地球温暖化により日本近海に北上。輸出品としての可能性、またこれまで破棄されていた低・未利用魚の活用という点から注目の魚種

写真提供=国立研究開発法人水産研究・教育機構

スマート水産業がもたらす
魚イノベーション

漁業就業者数が減少し、高齢化が進む中で注目されているのがIoTやAIなどの先端技術を活用したスマート水産業。省人化・省力化による効率性・収益性の向上を図る。

沿岸漁業ではICTを活用して漁場を探索し、漁場環境を予測した上で出漁を判断する取り組み、沖合・遠洋漁業では人工衛星のデータと漁獲データをAIで分析し、漁場形成予測を行う取り組み、養殖業ではICTを活用した自動給餌システムや遠隔操作での給餌量管理の取り組みなどが進んでいる。

漁獲量増加のキーは養殖にあり!?

日本の漁業・養殖業の生産量は減少しているが、世界的には増加中。特に養殖業は大幅に増加し、「令和5年度 水産白書」によると過去42年間で16倍以上に拡大している。2022年の日本では漁業・養殖業の生産量の約24%、生産額の約42%を養殖業が占める。海面漁業に比べ、計画的・安定的に生産できるため、水産業の成長産業化、食料安全保障の点でも期待が高まっている。また、世界的に評価の高い日本の養殖水産物の輸出拡大に向けた取り組みも進んでいる。

食卓の永遠のライバル
「魚」と「肉」

2011年度以降は肉類の消費量を下回っている。原因としては、肉類と比べて調理の負担感がある、調理法がわからない、骨があって食べづらい、価格の割高感などが考えられる

日本の食用魚介類の1人1年あたりの消費量は、2001年度の40.2kgをピークに減少傾向にあり、2022年度は22kg(概算値)と約半分にまで落ち込んでいる。漁業の持続可能性を高めるためにも国産水産物の消費拡大は重要。

栄養価が高く、輸送・保存の点から環境負荷の少ない旬の魚をはじめとした魚食の普及活動、ニーズに対応する商品開発、低・未利用魚の活用などの取り組みが進んでいる。

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日本の食の課題
01|食の未来のキーは「米」
02|漁獲量減少は地球温暖化の影響!?

text: Miyu Narita
2025年6月号「人生100年時代、食を考える。」

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